――今回のオフィスリニューアルとBGM導入に至った背景を教えてください。
岡田様
オフィス改革の背景には、社会全体の働き方の多様化とニューノーマル時代への対応がありました。コロナ禍を経て、リモートワークが普及し、オフィスのあり方が大きく変化する中で、私たちは「社員が行きたくなる、魅力的なワークプレイスとは何か」を問い直しました。既存のオフィスは、時間の経過と共に時代のニーズに完全には応えきれていない部分もあり、これを機に、社員がより創造的に、そして快適に働ける環境への変革を決意しました。
一方でBGM導入を検討したのは、弊社社長が会食の席でオフィスBGMの効果について話を聞いたことがきっかけです。その可能性を詳しく検証するため、USEN本社をはじめとする約20社の企業を対象に、実地調査とヒアリングを実施。調査を通じて、私たちは音楽がオフィス環境にもたらす劇的な変化を目の当たりにしました。活気に溢れるワークスペース、自然に生まれる社員同士のコミュニケーション、そして働く人々の表情に宿る明るさ。これらの光景から、BGMがもたらすポジティブな影響を肌で感じました。
特に印象深かったのは、音楽が人の行動や心理に与える潜在的な力です。例えば、閉店時に流れる「蛍の光」が来客の行動を自然に促すように、音楽には人の意識や行動を穏やかに導く効果があります。この原理をオフィス環境に応用することで、社員の集中力向上、適度な気分転換、さらには部署を超えた偶発的なコミュニケーションの活性化が期待できると確信するに至りました。
――新たな働き方に対応するという狙いがあったのですね。BGMの導入はどのように進められたのでしょうか。
岡田様
ニューノーマル時代のオフィスのあり方を根本から見直すため、実際に働く社員を巻き込んだプロジェクトチームを発足させました。そして、新しいオフィスのコンセプトを「Life Exploration Ship ~ともに未来へ漕ぎ出そう~」と策定。これは、社員が心身ともに健康に働ける。仲間と繋がり、呼吸を合わせて、ともに探求の旅へ漕ぎ出す船のような場所にしたいという思いを込めています。
有冨様
そのコンセプトの核となるのが、フロア中央に設けた「みなぎるスペース」です。軽飲食やコーヒーサービスを提供するこの空間は、フロア全体の動線の要として機能し、自然と人々が集まるマグネットのような求心力を持っています。
都築様
BGMはこの「みなぎるスペース」を中心に流れています。BGM導入に関しては、当初は様々な意見があったため、「新しい働き方を創造するための挑戦」として、東京オフィスでのパイロット導入をすることにしたんです。実際に導入を進める中で、社員からの声にも耳を傾け、要望の多かった廊下やトイレなどの共用部には、気になる生活音を和らげるマスキング効果を狙った環境音楽を導入しました。
――社員の皆さんと一体となって作り上げられたのですね。実際にBGMを導入されて、どのような変化がありましたか?
岡田様
効果は私たちの想像以上でした。導入前後のアンケートでは、オフィスの満足度を示すスコアがマイナスからプラスへと劇的に向上しました。特に評価が高かったのが「リフレッシュできる空間」で、その要因として「雰囲気」や「BGM」を挙げる声が非常に多かったです。
都築様
フロアの雰囲気が全く違います。以前は静かすぎた空間が、BGMがあることで明るく、コミュニケーションが取りやすい空気に変わりました。エレベーターを降りた瞬間から「うちの会社じゃないみたいだ」と感じるほどで、仕事へのモチベーションも自然と上がります。
井上様
「BGMのおかげで周りの会話や電話の声が気にならなくなった」「トイレのBGMが良い」という具体的な声も多く、マスキング効果も実感しています。ある社員からは「マイナスの話もBGMがあるとプラスに聞こえるから不思議だ」という面白い感想もありました。
――まさに空間の価値を高める効果ですね。「みなぎるスペース」は他のフロアの方も利用されるのですか?
井上様
はい。コーヒーメーカーを目当てに他のフロアの社員が立ち寄り、そこで自然な会話が生まれてきています。今後益々部署の垣根を越えた偶発的なコミュニケーションのハブとして期待しています。
――音の使い分けも意識されたのでしょうか。
有冨様
今回、執務エリアとトイレ・廊下では音源を分けています。トイレや廊下のような共用部では気分転換やリラックスを促すヒーリング系の音楽を、メインの「みなぎるスペース」ではカフェのような少し活気のある音楽を流すことで、空間ごとに最適な環境をデザインしました。
岡田様
その使い分けの効果は非常に大きいと感じています。特にトイレのBGMは女性社員から非常に好評です。オフィス全体で同じ音楽を流すのではなく、空間の用途に合わせてBGMを変えることが、満足度向上に繋がった重要なポイントでした。
◆執務室用プログラムタイマー
08:00 クラシック(モーニング)
11:00 くつろぎのGuitar Compilation
11:45 soft jazz
13:15 アコースティック(リラックス)
15:00 オフィス向けclassic Compilation
17:00 ヒーリングCafé
20:00 電源OFF
◆共用部及びお手洗い(男女)
08:00 リラックスBGM
19:00 電源OFF
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
岡田様
今回の成功事例をもとに、今後はオフィスのみならず工場への展開も検討していきたいと思います。BGMがもたらすポジティブな効果を、会社全体に広げていきたいですね。
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