<連載>経営戦略としてのワーク・ライフバランス

第6回 どうやって、割り込み業務に対処していくか?

割り込み業務はコントロールできないのか?

 「お客様からの急なお問い合わせで、予定通りに仕事が進まない」

「他部門からの照会業務に忙殺されている」

みなさんの中には、予想をしていない社内外からの急な依頼――いわゆる「割り込み業務」によって、本来自分がしたい仕事に手を付けられなかった、という経験をしたことがあるかもしれません。クライアント企業様にヒアリングをすると、必ずと言っていいほど「割り込み業務」の問題に直面します。

「割り込み業務」はお客様や他部門が関わることもあり、自部門では対応することができないと考える方が多いのも特徴です。

しかし、コンサルティングの現場において、素晴らしい工夫とアイデアでこの問題を解決する場面を何度も見てきました。今回はその方法や事例を紹介していきます。

割り込み業務に対応するために―①自部門の意識や働き方を変える

 割り込み業務への対応は①自部門の意識や働き方を変える方法と②直接相手に働きかける方法の大きく2つあります。

まずは①について見ていきましょう。代表的な2つの方法を紹介します。

【クッションタイム】

「本来やろうとしていた仕事ができなかった」と思う方の中には、そもそも割り込み業務を1日の予定の中に組み込んでいない可能性があります。高頻度で発生しているのであれば、毎日一定時間は割り込み業務に取られてしまうものと考えて予定を立てるようにしましょう。そうすることで、無理な予定を立てないということに繋がり、「本来やるべきことができなかった」というストレスも感じずにすみます。

【集中タイム・集中ルーム】

集中タイムは集中するための時間を作るための取り組みです。例えば1人1日2時間までと決め、好きな時間にポールなどを机の近くに置いて(図1)、周りの方にも集中タイムに入っているということを伝えるようにします。その時間には、電話を取り次がない、話しかけないなどルールを決め、集中できる状態を作ります。

一方、集中ルームは集中するための部屋を設ける取り組みです。物理的な部屋(ないしは専用の机など)を用意し、一定時間その部屋・場所を1人で使えるようにします。ある企業では部屋を防音ルームにして、より集中しやすい環境を整えていました。

①については他にも様々な取り組みがあります。(図2)まずはすぐに取り入れられそうなものから試してみましょう。

割り込み業務に対応するために―②直接相手に働きかける

 抱える課題によって対策は大きく異なります。4社の事例を見ていきましょう。

【A社 営業部門】

海外の取引先から退社時間帯に問い合わせが来ることが多く、それを待ってしまい残業が続いている状況でした。また、取引先から送られてくる資料には不備が目立ち、不足情報をヒアリングするという手間が発生。そこで、部門内の若手社員(30歳前半)を現地に送り込み、どのような業務フローが理想的なのか、まるでその会社の社員のように一緒に検討。資料類もヒアリングの手間が発生しないように記載項目を整備し、更には「日本時間の●●時~●●時であれば、電話に確実に出ることができる」と相手にメリットがある形で伝え、電話が業務時間内に来るようにコントロールすることに成功しました。

【B社 システム開発部門】

お客様からエラーが発生すると、すぐにお問い合わせが来てしまい、業務がストップしてしまう状況でした。そこで、マニュアルを分かりやすいように更新。また簡易版のマニュアルも作成しお客様に配布。更には、エラー発生時の表記がアルファベットと数字のみで分かりづらいことが、マニュアルを見もせずにお客様が問い合わせてしまう原因であると仮説を立て、エラー表示の際にあわせて日本語で「1度シャットダウンしてください」「マニュアルの●●ページをご覧ください」等、具体的なアクションを促す表記を追記しました。こうした一連の取り組みを通じ、問い合わせ回数の削減に成功しました。

【C社 開発部門】

営業部門の製品への理解が足りないため、開発部門に直接お客様から質問が来てしまうという状態が続いていました。開発部門は営業部門への不満を募らせていたのですが、発想を変えて営業部門に向けた勉強会を開催。製品への理解度が上がったことで、開発部門に頼らずに営業部門だけで回答できるようになり、開発部門へのお問い合わせが激減しました。

【D社 調達部門】

適切なタイミングで発注をしても取引先の納品のタイミングが遅れ、そのカバーするために長時間労働が発生していました。そこで、各社の未納件数を比較するグラフを作成。その情報を取引先全てに展開。どの企業が特に納品が遅れているのか、一目で分かってしまう状況に。結果、取り組み開始前と開始後では、1月あたりの未納件数が251件→31件と約88%も削減することに成功しました。

この他にも、共同研究開発している企業に、資料提出の期限をルール化することを提案し、資料提供までの待ち時間を減らすなどの工夫をしている部門もありました。

割り込み業務解消の一番の壁になるものとは?

 紹介した事例は問題が異なっているために、取り入れることはできない内容かもしれません。私が一番伝えたかったことは具体的な手法ではなく、各社の取り組みを行う上での共通点です。それは「他部門や他社とのことだからとあきらめず、解決するための方法を模索し続けた」ということです。現状の考え方に囚われず、発想の転換をすることによって必ず解決策は見つかります。ぜひ、割り込み業務で困っていたら、「本当に解決できないのか?」「どうしたら解決できるのか?」と何度も自身に問いかけてみましょう。

次回は「コミュニケーション不全」について見ていきます。
著者紹介
村上 健太

株式会社ワーク・ライフバランス ワーク・ライフバランスコンサルタント

村上 健太(むらかみ けんた)

【経歴】

2008年 SBI損害保険株式会社入社 管理本部配属。
2012年 株式会社ワーク・ライフバランスに参画。
仕事を抱え込む傾向にある長時間労働のクライアントに対し、効果的なアドバイスを行うことで定評がある。
http://www.work-life-b.com/

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