有識者の声

ワーク・ライフバランス~人を育てる環境作り~

社員それぞれへの心のケアと
ひとりひとりの生産性の向上のために

 これまでのオフィスというのはお互いに“忙しいオーラ”を出して、話しかけられないようにするような空気がありました。そうでもしないと〈あいつは余裕がある〉とみなされた挙げ句に仕事を詰め込まれてしまう、といったネガティブな発想があるからです。そうやってお互いのことを牽制し合うと、働く人たちの心が疲れてしまうんです。実はここにメンタルヘルスの問題があります。それは仕事に対する疲れではなく、職場環境に対する疲れですよね。お互いが心にバリアを張ったまま仕事をするのではなく、相手やチームに心を自然と寄り添うことができるシステムを作ることが、今後のオフィスの課題ではないかと思います。チーム内での仕事の偏りを分散させ、かつチームの力を一定にする……この課題に対する具体的な方法が、〈朝・夜メール〉です。

 日報と朝・夜メールは似ているように思われがちですが、全く違うものです。日報は一日の業務を単に記録するものですから、上司への報告が主な目的となります。つまり自分のメリットはあまりない。一方「朝メール」の場合は1日の予定を立てることでその日の自分を分析し、仕事の優先順位をつけることが目的です。例えば〈普段こういう作業には2時間はかかるけど、今日の自分だったら1時間50分でやれるかも〉と、アスリート的な発想で予定を立ててみたり。あるいはその逆で〈今日の仕事はトラブルが起こるかもしれない〉といった事態も予め想定しておくんです。例えば〈たぶんあのクライアントが3時くらいにややこしいことを言ってくるぞ〉というような。そうやって〈朝メール〉でその日の自分の仕事を想定しておくと、いざトラブルが起こってもゲンナリすることなく対処できるのです。つまり仕事がアンコントローラブルな状態で精神が疲弊してしまうことを防ぐことができる。そして一日の成果や結果を〈夜メール〉で報告すること。ここがとても重要です。共有することで、自分の仕事をみんなが分かってくれたり応援してくれたりする関係ができる。そうやってチームの一体感が生まれ、コミュニケーションが増えるのです。

株式会社ワーク・ライフバランス独自の環境作り

 弊社で実践しているのはフリーアドレス制です。個人のデスクが決まっておらず、その日仕事をしたい場所で仕事をします。そもそも1人の社員が3つの部署に配属されているような不思議な会社なので(笑)、自分が今日どの部署の仕事に力を入れるかによって、居場所を決めるのです。〈この仕事はあの人の近くでやるといろいろ相談できる〉ということもあるでしょうし〈あの人の仕事のやり方を盗みたい〉という理由で隣りに座ることもある。そうやって仕事に対して受け身ではなく自らコントロールし、さらにスキルアップも目指す。人が育つ環境作りです。

小室 淑恵
小室 淑恵
Yoshie Komuro

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 産業競争力会議 民間議員
企業のコンサルタントをはじめ研修・講演のほか、政府機関の専門委員なども務める2児の母。著書に「6時に帰るチーム術」「チームを動かす!リーダー術」「小室淑恵の人生プレゼン術」などがある。