有識者の声

企業の「ストレスチェック」導入義務化への対応

メンタルヘルスについて管理職者をしっかり教育することが大切

 企業での「ストレスチェック」実施義務を含む労働安全衛生法の改正が、本年(平成26年)6月国会を通過しました。法律施行日は平成27年12月1日です。日本においてメンタルヘルス不調で会社を休む人の数が増加の一途であるという背景があるため、ストレスチェックを行うことで、職場のどこに、どんなストレスが、どれくらいあるのか、を定量的に把握して、職場単位で対策を検討しましょうというのが第一の目的です。ストレスの原因を究明し、改善すればその不調者数は減るのではないかという考え方から、今回の法案が制定されました。

 メンタル不調で休職する事例は私もよく経験しますが、特によく耳にすることは、そういった部下を持つ管理職の方々の困惑です。仕事があるのに休まれてしまうことの迷惑もそうですが、復帰してきたときにどう接すればいいのかわからないということも大きな問題です。ですので、今の時代、メンタルヘルスについて管理職者をしっかりと教育することが大切だと思います。と言うのも、会社のストレスというのはだいたい上司で決まるものだからです。仕事内容が合わない、仕事量が多いといったストレス源となる要因は、どの職場に行ってもあるもので、そこをうまく采配してくれたり、励ましてくれたりする上司がいたら、同じ仕事をしていても全然違います。だからこそ部下を持つ立場である人に、ある意味でご自身がストレス源となっていることを教えなくてはいけないし、逆に自分がストレスを減らすことができる人でもあることに気づかせてあげることが大切です。その上で対処できないケースがある場合は、1人で抱えず、産業医あるいは産業保健者(保健師等)に相談すればいいと伝えてあげるのです。管理職者に対してそうした教育がしっかりできている会社は、実際、職場のストレスコントロールがうまくできているという印象があります。

 とは言え、管理職者への教育よりも先に、ストレスチェックの導入を行う企業も多いでしょう。導入にあたり一番有効かつ理想的な形は、会社としてストレスチェックをどう扱い、どう社員へフィードバックし、出た結果をどう判断するのかを、衛生委員会や安全衛生委員会できちんと議論することです。そして、そこで決まったことをちゃんと社員に伝えること。ストレスチェックの実施が自分たちの職場環境の改善に繋がっているということを社員全員に周知することが大事です。それに加え、職場にあるストレスとどうやって付き合っていくかをみんなで議論して、提案をして解決していくという取り組みこそ効果を生みます。ご存じだと思いますが、「ストレスチェック」をするだけではメンタルヘルス不調者は減りませんからね。

ストレス緩和に音楽は有効な手段だと思います

 働く人がメンタルヘルスを保つためには、ワークライフバランスが非常に重要になってきます。幸せにつながる働き方をするためには何が必要なのかを、労働者それぞれが考えたほうがいいと思います。私が話を聞いている中で、メンタルヘルスの不調を訴える人の多くは、仕事を通じて自己実現ができていない場合が多いと感じます。逆にきちんと自己アイデンティファイされている人はストレスに対する抵抗力や耐性があるように思います。

 その他、企業におけるメンタルヘルス対策としては、音楽を社内BGMに取り入れるのも期待できます。音楽が社員たちの共通の話題となってコミュニケーションが盛んになることもあるでしょうし、もしかしたらストレス対策について議論をしていく中で、「終業時に音楽があるといいよね」とか「気分転換に音楽が聴けるスペースがあるといいね」といった提案ももちろん出てくることでしょう。ストレス緩和には運動やリラクゼーションなどさまざまな方法がありますが、なかでも音楽は、医学的にも音楽療法というジャンルがあるとおり、手軽に取り組める有効な手段だと思います。

浜口 伝博
浜口 伝博
Tsutahiro Hamaguchi

医師・医学博士、産業医、産業医科大学産業衛生教授。産業医科大学卒業後、(株)東芝、日本IBMにて専属産業医、統括産業医として活躍。現在は産業医オフィスを経営し、大手企業複数にて統括産業医を担当しながら後続産業医の育成に尽力中。慶應義塾大学医学部非常勤講師、愛媛大学医学部非常勤講師。