有識者の声

オフィスでも活用できる“モーツァルト効果”

生活習慣病を音楽で抑制できるということが分かっています

 音楽にはいろいろな力がありますが、その中でも特に自覚できる力が3つあります。1つめは音楽を介すと、知らない人同士がすぐ仲良くなるという力――人間関係のコミュニケーションを促す作用です。2つめは、音楽を聴くことで懐かしくなったり穏やかな心になるという心理的な作用。そして3つめの働きは私が研究していることに相当するのですが、ある音響学的な特性が副交感神経にダイレクトに作用するということです。この3つめの働きに関して詳しくお話します。この作用とは、血圧や心拍が安定してきたり、唾液がよく出たり、あるいは身体が暖まったり、消化管の機能が高まるなど、音楽が副交感神経に直接働きかけて起こるものです。これら音楽の持つ力を組み合わせ、病気や未病の改善効果を促すのが、私が唱える音楽療法というものです。

 現代社会は交感神経が副交感神経に比べ優位に働くことが常であり、しかも35歳を過ぎて加齢が進むと、どんどん交感神経が優位になります。ゆえに、歳をとると誰でも血圧が上がったり冷え症になったりするのですが、不快な人間関係や働き過ぎや寝不足などストレスの多い生活の中では、交感神経はさらに優位になってしまうのです。こうなってしまうと、リンパ球の機能が落ちて、ガンや糖尿病といった生活習慣病と呼ばれる病気になる確率も上がります。しかし、実はこれらを音楽によって抑制することができる、ということが分かってきました。私は、優位に立つ交感神経が副交感神経へとスイッチを入れ替えるパターンを音楽の中に見つけたからなのです。

 人間が集中している時には、β波という脳波がたくさん出ています。ただ、どんなに一生懸命集中してもせいぜい40分から1時間ぐらいで集中力は低下します。したがって、低下したら、そこで一旦脳を休めることが必要になります。このとき、副交感神経にスイッチを入れる音楽を活用することがとても大切になります。BGMを聴きながら仕事をすることも大事ですが、一旦仕事の手を止めて、音楽を聴くことを意識し、副交感神経のスイッチを入れること。これが生産性を向上させる上で大切なのです。

音は薬です。「効く」ではなく「聴く」薬なのです

 Sound Design for OFFICEのS-01チャンネルで、中村先生(註:中村由利子/作曲家・演奏家)に楽曲制作をお願いするにあたって、周波数や曲の長さといったいくつかの要素やテーマを曲に盛り込んでもらいました。そして作っていただいた曲は、実際モーツァルトと同じような健康効果があり、副交感神経にスイッチが入るパターンを示しています。※

 私がモーツァルトの研究をするようになったきっかけは、免疫学の研究です。半世紀以上前にフランスの耳鼻咽喉科医であったアルフレッド・トマティスという人が「モーツァルトの音楽には人の社会性を高めたり、脈拍を安定させたりする作用がある」ということを見出していたのです。そして1990年代には、カリフォルニア大学の研究グループが、脳神経系にモーツァルトの音楽が影響することを発表しました。その研究を通して、モーツァルトを聴くだけで免疫力が高まるなら、感染症の予防にもなるのではないか、ということを考えて研究を始めたのです。

 音は薬です。「効く」ではなく「聴く」薬なのです。会社の経営者の方々にお願いしたいのは、オフィスにちょっとした音楽の聴ける部屋を作ってもらいたいということです。例えば、お昼を食べて午後の仕事が始まるまでの間、その部屋で10分間か20分間、目を閉じて音楽を聴いてもらえれば、その人の午後の生産性はかなり上がると期待できるのです。

(※)本内容は、各種研究により得た分析結果を記載しており、当該分析結果が、お客様に対して何らかの効果を断言、保証しているものではありません。

和合 治久
和合 治久
Haruhisa Wago

埼玉医科大学教授。東京農工大学大学院修士課程修了後、京都大学で理学博士取得。免疫音楽医療学などが専門。「モーツァルト音楽療法で未病克服力をつける」「音楽療法元年」など、音楽療法に関する著書多数。