【特別編】ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO石黒不二代インタビュー

【特集】人が活きる、企業が活きる 代表取締役社長 兼 CEO石黒不二代さん、会社というのはすごく有機的な組織ですから私の力だけで動くわけではありません。自分が得意なものと、他の人が持っている得意なものが組み合わさることで製品やサービスも生まれますし組織も動くと思うんです

情報産業分野が大きく広がっていく現代において、企業の進化をもたらすものに、新しいアイデアやコミュニケーション活性化による“ 人が活きる環境作り” があると考えます。では、“ 人が活きる環境作り”とは、具体的にどんなものなのでしょう。
“人生の棚卸し”という言葉で、ネットイヤーグループ代表取締役社長 兼 CEOである石黒不二代さんは、自分自身の根底にある部分と常に向き合われてきました。国内で会社勤務した後、米国・スタンフォード大学ビジネススクールに留学し MBAを取得、そのまま米国で起業するなど、華やかなキャリアの裏側にはどんな思い、決断があったのか。それらを経て、現在どのようなスタンスで人と向き合い、経営を行われているのか。SDO導入の経緯なども含め、石黒さんにお話をうかがいました。

“人生の棚卸し”は日常から少し離れた状況で行うのがポイント

―― 石黒さんはこれまで、著書やインタビュー記事の中でたびたび“人生の棚卸し”について語っておられます。
石黒さんご自身の中で、過去、一番大きな棚卸しは、やはり渡米や起業のタイミングですか?

 一番は起業の時ですね。渡米する時はそっちのほうがいいと思って、あまり迷わなかったので。起業となるとやはりリスキーですし、その時、子供はまだ4 歳。グリーンカードも持っておらず、アメリカに落ち着けるかわからない状況でしたから。そういう時にどういう職業を選ぶのがいいのか、きちんと考えなきゃいけない時期でした

――起業という結論に至るまでには、どんな棚卸しをされたのですか?

 大前提として、まずはいかに子供の安全を保ち、よりよい教育を受けられる環境を与えられるかを考えました。仕事のことはその中でバランスを見つつという形でしたが、結果として、当時オファーを受けていた会社よりも自分で起業するほうがいいという結論に辿り着きました

――具体的にどんなことをするのが“人生の棚卸し”なんでしょう?

 基本的には、よーーーく考えることです。日常から少し離れた状況で行うのがポイントですね。商品の棚卸しなどにも、丸一日以上、時間がかかるのと同じように、人生の棚卸しも、普段のことをしながらではなかなか難しいと思います。私の場合は子供もいたので、子供が保育園に行っている間、MBA 取得のために通っていたスタンフォード大学のカフェテラスでずっと考えていました

判断基準になるのが過去の出来事に対する自分の感情

――どんな思考の過程がそこにあったんでしょうか。

 過去に起こった出来事についてとか、何が自分にとって幸せなのかとか――そういうことをひとつひとつ考えて。もちろんすべてを手にすることはできないので、そこで何を手放せるかについても考えましたね。その時に判断基準となるのが、嬉しかったことや悔しかったことといった、過去の出来事に対する自分の感情でした。自分にとっての幸せや目指すゴール、そしてそこに到達するために、何をすべきかということも考えて、起業したほうがいいという結論に到達したんです

――こういった、突き詰める思考法は、石黒さんが元来、持っていらっしゃったものなのでしょうか?

 そもそも、どうして私がこういうことをするようになったかというと……スタンフォード大学を受験する際、必要な要素の一つにエッセイ(小論文)の提出があったからなんです。それが合否基準の中で一番重要視される、しかも、アメリカ人は大学受験のために高校の時からそういうことをやっているので、提出する側はもちろん、それを見る側の目も鍛えられてるんです。当然のことながら嘘は書けないですし、相当考えて書く必要がありました。私の場合、そこで“棚卸し”のクセがついたように思います

BGMが流れる華やかなエントランス。壁にはさまざまなメッセージが記されています。

BGMが流れる華やかなエントランス。壁にはさまざまなメッセージが記されています。

相手を尊重し、さらに相手が持っている知識を共有してもらう仕組みが大切

――現在、CEOを務める石黒さんは、見る側のプロとも言えます。
入社を希望される方に対して、重要視されているのはどのような部分ですか?

 私が面接をするケースは幹部候補になるので、みなさん優秀な方ばかりなんです。その中で一番考えるのは、この会社にフィットするかどうかという部分。ただ、すべてがフィットしてしまうと一枚岩になってしまい、あまりよくないこともあります。全部スムーズにひとつひとつ積み重ねていくことも大切ですが、会社ってそればかりではないと思うんです。今のままではダメだと思う時や、会社自体が変わりたいという場面も、長くやっていると必ず訪れるものですから。特に(会社としての)ビジョンやカルチャーを考える際、同じような人ばかりだと知らず知らずのうちに形ができ上がってしまうというか。会社がある程度大きくなってくると、それなりの基準もできてきますし、また違った形での成長が求められることがあるので、その時に、どういう人が入ってくれたら理想的な形になるかということは考えます。また、ワンマンにならないように、かなり多くの権限を部下に委譲するようにもしていますね

―― 今の会社にはどんなところが足りないとお考えですか?

 弊社の場合、一つのプロジェクトにわりと大勢が入ることが多いんですね。お客様に対するプロジェクトはとても雰囲気がいいのですが、それこそ“棚卸し”的に見ると、会社としてチームで働くことはあまり得意ではないんです。頭のいい優秀な人が多いものの、それぞれの自己主張も強いというか。なので、そういうところを変えていくために、自分がどう変わるか、次に入る人はどんな人がいいかは常に考えなければいけないところだと思っています

―― 自分から変わろうとする姿勢は素晴らしいと思います。

 難しいですけどね(笑)。でも、会社というのはすごく有機的な組織ですから、私の力だけで動くわけではありません。自分が得意なものと、他の人が持っている得意なものが組み合わさることで製品やサービスが生まれますし、組織も動くと思うんです。なので、相手を尊重し、さらに相手が持っている知識を共有してもらう仕組み作りが大切で。そのためには、自分が変わることや、それができるメンバーを集めること以外にも、組織やシステムの作り方などでサポートをしてあげないといけないと思っています

―― 社員の能力ややる気を引き出すという意味では、働く環境作りも重要になってくるかと思います。御社はエントランスにビリヤード台が置いてあったり、カラフルなインテリアが施されているほか、 SDOも導入されるなど、さまざまな工夫をされていますよね。

 そうですね。私たちの会社では、自分の時間のマネジメントの仕方は基本的に個人に委ねているんです。極端な話、就業中であっても眠たければ寝ていいですし、集中力が途切れたら社内にあるビリヤード台やダーツ、卓球台などで遊んでもかまいません。また、各自のデスクもありますが、必ずしもそこで仕事をする必要はなく、ラウンジと呼ばれるフリースペースで仕事をする人も多いです。100%、120%のパフォーマンスを発揮するために、自分の時間を設計するという思想でやっています

自分も楽しく、相手も楽しくなるような仕事をしていきたいですね

――SDOを導入したことによるみなさんの反応はいかがでしょうか。

 社内に音楽を流したらどうかという意見は、社員から出てきたんです。以前から個々でスピーカーやヘッドホンで音楽を聴いていたのですが、それだとフロア全体に流すのは難しいので。音楽があればリラックスできると考えて導入を決めました。社員はもちろんですが、お越しいただく取引先の方にも好評です。SDO に限らず、社員からこうしたい、こういうものがあるといいといった意見が出てくるのはすごくいいと思っています

――IT やデジタルの世界というとなんとなくクールなイメージでしたが、石黒さんのお話をうかがうと、とても人間的な視点で物事を見てらっしゃることがよくわかりました。

 弊社のようなデジタルマーケティングの仕事とは、ブランドとユーザーの関係性を作ることだと思っているのですが、その時にすべてをデジタル化してしまうのはよくないと思っています。例えば、メールなんかは記録が残るという点で便利ですけれど、顔が見えないぶん冷たいことも躊躇なく書けてしまったり、隣にいる人にメールを送ったり……ちょっとおかしいことが当たり前のように起こってますよね。そういう部分は、サービスプロバイダ側である私たちが気をつけないといけないな、と。弊社の特徴でもある“ユーザーエクスペリエンスデザイン”はそういった面を重視しての徹底したユーザー視線でのサービス設計です。会社としてそういうメッセージを発信していますし、自分も楽しく、相手も楽しくできるような仕事をしていきたいですね

フリースペースである“ ラウンジ” ではSDOのマスキング効果が。

フリースペースである“ ラウンジ” ではSDOのマスキング効果が。

代表取締役社長 兼 CEO 石黒不二代さん Fujiyo Ishiguro

代表取締役社長 兼 CEO
石黒不二代 Fujiyo Ishiguro

名古屋大学経済学部卒業後、ブラザー工業へ入社。
その後、スワロフスキー・ジャパンを経てスタンフォード大学ビジネススクールへ入学。MBA 取得後にアメリカ・シリコンバレーにて、コンサルティング会社Alphametric Inc. を設立。日本の大手企業とアメリカのベンチャー企業の技術移転に従事する。
1999年1月よりネットイヤーグループへ参画。
2000年5月、同社代表取締役社長に就任する。

ネットイヤーグループ株式会社 会社ロゴ
ネットイヤーグループ株式会社
デジタルマーケティングに関するコンサルティング、デジタルコンテンツの企画制作、システム開発、マーケティングツールの企画販売、クラウド型オフィスツールの企画販売、地域共創事業など、「ビジネスの未来をデジタルで創る。ビジネスの未来をユーザーと創る」をビジョンとしてさまざまな事業を展開している。